膝痛の原因は間違った歩き方にあった! 痛みを防ぐ歩き方を伝授

監修: 光伸メディカルクリニック院長 中村 光伸  免責事項について

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日頃の運動不足が気になる方にとって、ウォーキングは手軽に始められることで人気です。しかし、いざ始めてみると「膝が痛くなって思うように歩けない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか? 実は、歩き方が原因で膝痛を招くことがあり、膝に痛みがあるときに適した歩き方もあるのです。この記事では、膝に違和感を抱いている方や膝の痛みに悩む方のために、正しい歩き方から予防法まで詳しくお伝えします。

  1. 歩き方が原因で膝痛になる
  2. 膝痛にならない歩き方について
  3. 膝痛の場合の歩き方について
  4. 膝痛の予防方法
  5. よくある質問

この記事を読むことで、膝を痛めない歩き方や膝が痛い場合の対処の仕方が分かります。正しい歩き方を知り、健康への第一歩を踏み出しましょう。


1.歩き方が原因で膝痛になる

歩くことは生活の基本的な動作です。歩き方と膝の関係や、膝の痛みについて説明します。

1-1.膝のメカニズム

膝は、太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)とすねの骨(脛骨:けいこつ)をつないでいる関節で、前面にはお皿といわれる(膝蓋骨:しつがいこつ)があります。それぞれの骨の接触面は、関節軟骨というクッションで覆われているので、硬い骨が直接ぶつかり合うことはありません。
大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)は、じん帯でつながれており、前後左右のバランスをとっています。また、膝を曲げたり伸ばしたりできるのは、関節部分の骨が筋肉や腱(けん)とつながっているからです。膝を伸ばす動きは、太ももの前面で膝蓋骨(しつがいこつ)とつながる大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の働きによるもので、膝を曲げるのは、膝の裏側の膝屈筋(ひざくっきん)が働いています。膝の可動域は広く、歩くときには60度、しゃがむときには100度、正座では140度程度曲げることができるのです。

1-2.歩き方と膝痛の関係

立つ、座る、歩くなど、毎日の生活の中で膝は休むことなく動いています。歩くだけでも体重の1.5~2倍の負荷がかかるといわれており、階段の上り下りでは2~3倍、走ると5倍の負荷がかかるのです。
厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、20~64歳の1日平均歩数は男性で7,769歩、女性で6,770歩となっています。歩き方が悪いと、この歩数分の無理な負荷が毎日かかることになるのです。その結果として、関節部分に不具合が生じやすくなります。

1-3.なぜ膝痛がおこるか

膝痛を招くような歩き方を引き起こす原因はどこにあるのでしょう。主な要因を3つあげます。

1-3-1.筋力の衰え

関節の柔軟性は加齢とともに失われていきます。30代あたりから関節周りの筋肉や腱(けん)も固くなっていくのです。太ももとふくらはぎの筋力が衰えると、筋肉が膝の動きをサポートすることができません。この状態で、一般的にウォーキングで推奨される「膝を伸ばしてかかとから着地し、後ろ足で蹴り上げる」という歩き方を実践しようとすると、着地の衝撃を十分に吸収することができず、膝に過度の負担がかかるのです。また、衰えた筋肉を急激に動かすと、筋肉に炎症がおこって痛む場合があります。

1-3-2.加齢による軟骨のすり減り

歩くことで膝には体重以上の負担がかかり、これが長年積み重なることで、関節の軟骨がすり減ることが知られています。関節の軟骨がすり減ると、関節内のクッションが弱まるため、膝を動かすことで違和感や痛みを覚えるようになるのです。

1-3-3.O脚、X脚など骨格的特徴によるもの

日本人にはO脚が多いといわれています。立ったとき、両足の膝がつかずに脚が外側にアーチを描いているのがO脚です。一方、左右の膝をつけたとき両足のくるぶしの間が開いてしまうのはX脚といわれます。このように脚の形に問題があると、膝が正面を向いていないため、歩く方向と膝の方向のずれから歪みを生じ、膝に負担をかける歩き方になるのです。
O脚は膝が外側を向いた状態で、いわゆるガニ股歩きのような状態になります。膝の内側に負担がかかり、膝の内側が痛くなるのです。反対にX脚は内股歩きになり、膝の外側に痛みが生じます。

歩き方が悪いと膝に無理な負荷をかけてしまうんですね。
歩くだけで体重の1.5~2倍の負荷がかかります。1日平均歩数は男性で7,769歩、女性で6,770歩ですから、毎日これだけの負荷をかけていることを覚えておきましょう。

2.膝痛にならない歩き方について

歩き方が膝痛を引き起こすことが分かったところで、どうやって歩けば膝を痛めないのか、正しい歩き方を紹介します。

2-1.正しい歩き方とは

膝痛にならないためには、歩行のたびに膝にかかる衝撃をなるべく抑えることが大切です。正しい歩き方として、膝を伸ばしてかかとから着地する歩き方が推奨されることがありますが、これは、モデルなど見た目の美しさを重視した歩き方で、膝や腰には負担をかけてしまいます。膝を痛めないためには、膝は伸ばすのではなく、軽く曲げることで着地の衝撃を吸収することができるのです。
そのためには、歩くときに膝をいつもより少し持ち上げるよう意識しましょう。着地は、足指の裏、指の付け根、かかとの3点でバランスよく体重を支えます。
歩幅は自然を心がけ、無理に大股にする必要はありません。むしろ歩幅を狭くして、スタスタと速めに歩くほうが膝への負担は減るのです。

2-2.ポイント

膝を伸ばしきらないようにすることです。軍隊の行進やモデル歩きのような、膝を伸ばした歩き方にならないように気をつけてください。また、進行方向に膝を向けるように意識すると、関節にねじれがおきないため、負担を減らすことができます。

2-3.注意点

歩いて膝が痛くなるのは、「変形性膝関節症」という病気の可能性もあります。これは、膝関節の軟骨が傷つくことで膝に炎症が起こるもので、歩き始めに膝が痛くなるのが特徴です。変形性膝関節症は進行性の病気なので、早めに受診するといいでしょう。

膝痛にならないためには、正しい歩き方をすればいいんですね。
膝を軽く曲げ、着地の衝撃を吸収するようにしましょう。着地は、足指の裏、指の付け根、かかとの3点でバランスよく体重を支えることを意識してください。

3.膝痛の場合の歩き方について

膝が痛い場合にはどのように歩けばいいのでしょう? 痛みをかばって歩いていると、ほかの部分にも負荷がかかり、新たな痛みを誘発してしまいます。ここでは、痛みを悪化させない歩き方を紹介しましょう。

3-1.膝痛の場合の歩き方とは

3-1-1.膝をゆるめる

膝痛を持つ人にとって、ウォーキングなどで推奨される、大股で歩くことやかかとで着地することは、かえって痛みを増してしまうことがあります。痛みがあるときには、なるべく着地の衝撃が少なくなるよう、膝をゆるめてショックを和らげましょう。
また、膝が痛いと、痛みにばかりに注意が向いて足元を見て前傾姿勢になりがちですが、これでは重心が前に行きすぎ、余計に膝に負担がかかってしまいます。歩くときにはまず背筋を伸ばすことを意識してください。足の力だけで歩こうとせず、体の重心を移動させることで自然と前へ進むようにします。それには、股関節から足を前に出すように意識して、膝を曲げながら足を上げ、膝が伸び切らないうちに着地するといいでしょう。このとき、足指の裏、指の付け根、かかとの3点で地面を捉えるようにします。

3-1-2.階段の上り下り

痛みがひどいときには、階段は無理をせず、一段ずつ両足を揃えるように上り下りすると負担が減ります。上るときには痛みがない方の足から踏み出し、1段上ったら痛い方の足を揃えるといいでしょう。下りる場合は痛みのない方の足から下り、痛みのない足を揃えます。

3-2.コツ、注意点

3-2-1.姿勢

背筋を伸ばすときに、胸を張りすぎると重心が後ろに行ってしまうので、顎を引きまっすぐ立つように心がけましょう。視線はやや遠くを見るようにし、足元を見ないようにします。

3-2-2.足の運び

ガニ股や内股、すり足にならないように注意し、足をしっかり上げることを心がけてください。着地の衝撃を和らげるため、膝は突っ張らないように気をつけましょう。

痛みを悪化させない歩き方が大事なんですね。
はい。膝をゆるめてショックを和らげることで着地の衝撃が少なくなります。また、階段は無理をせず、一段ずつ両足を揃えるように上り下りして負担を減らしましょう。

4.膝痛の予防方法

膝は痛くなる前に予防するのが賢明です。日頃の注意点などを紹介します。

4-1.生活習慣

4-1-1.運動習慣

膝痛の予防で大切なのは体重のコントロールです。肥満は膝に過度の負担をかけます。適度な運動を心がけましょう。初めのうちは、水中歩行やエアロバイクなど、膝に負担の少ない運動を取り入れるといいでしょう。

4-1-2.食習慣

膝の健康のために積極的にとりたい栄養素は、骨を作って丈夫にするカルシウム、カルシウムの吸収を助けるビタミンやミネラル、筋肉や軟骨を作るタンパク質やコラーゲンの3要素です。以下の食品にはこれらの栄養素が多く含まれています。

  • 緑黄色野菜(カルシウム・ビタミン・ミネラル)
  • 乳製品・魚介類・豆類(カルシウム・タンパク質)
  • 肉類・卵(タンパク質)
  • 魚肉の皮部分・軟骨部分(コラーゲン)

肥満を防ぐために暴飲暴食や高カロリーな食事を避け、腹八分を心がけてください。

4-2.予防法

膝痛の予防のためには、適度な運動が効果的です。しかし、日頃運動をしていない人は筋力が弱いので、いきなり負荷の高い運動をすると、かえって筋肉を傷める心配があります。運動の前にはストレッチをしましょう。太もものストレッチを紹介します。

●太ももの前面のストレッチ

  • 横向きに寝て、下になった腕を枕にしてリラックスする
  • 上側の足のつま先をつかみ、膝をお尻の方に曲げる
  • つま先を背中の方に向けて引っ張り15秒保つ
  • 左右向きを変えて1回ずつ行う

●太ももの裏面のストレッチ

  • 足を伸ばして仰向けに寝る
  • 片足を曲げ膝の裏側を両手で抱えるように膝を胸に引き寄せる
  • 10秒保ち、5~10回繰り返すのを1セットとする
  • 左右足向きを変えて1セット行う

4-3.サプリメントなど

外食が多い人や好き嫌いの激しい人は、食習慣の項目で触れた栄養素がうまく取れない場合もあるでしょう。そんな場合は、栄養補助のためにサプリメントを利用すると便利です。
軟骨は、水分が約75%、非変性2型コラーゲン約20%とグルコサミン・コンドロイチンが約5%でできています。グルコサミン・コンドロイチンやコラーゲンは、サプリメントでもおなじみですが、口から摂取しても消化の過程で糖とアミノ酸に分解されてしまうため、軟骨成分がそのまま軟骨として利用されるわけではありません。しかし、楽らく歩のように、非変性2型コラーゲンと同じ成分を持つUC-2が含まれたサプリメントなら、コラーゲンの形を維持したまま体に取り込むことができます。

4-4.注意点

膝痛サプリメントには有用性の根拠がないものもあります。成分を良く確かめて取り入れることが大切です。UC-2を取り入れる場合は、1日の推奨摂取量40mgがとれるものを選びましょう。

適度な運動やサプリが効くんですね。
肥満は膝に過度の負担をかけるので体重のコントロールも重要です。運動の際にはストレッチもお忘れなく。

5.よくある質問

Q.歩き始めに膝が痛みますが、歩いているうちに治ります。放っておいてもいいですか?
A.変形性膝関節症の初期症状かもしれません。早めに受診すると安心です。

Q.膝痛を予防する靴はありますか?
A.自分の足に合ったもので、クッション性のいいものを選んでください。試着をして買うといいでしょう。

Q.膝痛を防ぐために減量したいのですが、注意点はありますか?
A.極端な食事制限は、関節に必要な栄養素が不足する可能性があるためおすすめしません。適度な運動を取り入れて、減量中でも軟骨成分を取り入れることを意識してください。

Q.非変性2型コラーゲンは2型コラーゲンとは違うのでしょうか?
A.2型コラーゲンは、非変性2型コラーゲンに高熱処理などを施して成分を抽出したものです。分子構造が変わっているため、体内に入ってもコラーゲンとして認識されません。

Q.サプリメントはどのくらい続ければいいでしょう?
A.痛みの状態やサプリメントの種類にもよるので、一概には言えませんが、3~4か月で快適さを感じる方が多いようです。

膝痛で気になっていたことがわかってスッキリしました。
ぜひ参考にして歩き方や生活の改善をしてくださいね。食生活も見直し、サプリメントを取り入れることもおすすめします。

まとめ

健康のために始めたウォーキングで膝を痛めたのでは元も子もありません。筋力が衰えてもしっかり歩けるように、歩き方を見直しましょう。膝痛を予防するには、膝をゆるめて、足指の裏、指の付け根、かかとの3点で地面を捉えるように歩くと負担が少なくて済みます。また、関節の軟骨の減りに備え、食生活を見直すことも大切です。サプリメントを取り入れることも考え、快適な毎日を目指しましょう。

光伸メディカルクリニック院長中村 光伸

監修者

中村 光伸
光伸メディカルクリニック(東京 新宿)院長
医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科認定スポーツ医
日本整形外科認定リウマチ医
日本体育協会公認スポーツドクター
日本抗加齢学会認定専門医
日本胎盤臨床医学会認定専門医
日本美容皮膚科学会
日本レーザー治療学会

東京生まれ。北里大学医学部卒業、北里大学整形外科入局。
学位習得後、フンボルト大学外傷再建外科学(ドイツ)・チャンガン大学形成外科美容外科(台湾)へ留学。 Jリーグヴァンフォーレ甲府チームドクター、山梨学院大学陸上競技部(駅伝)チームドクターを歴任。 北里大学整形外科専任講師、北里大学救命救急整形外科部長、松倉クリニック&メディカルスパ等を経て、2011年12月、自身の理想とする医療を実現するため「光伸メディカルクリニック」を開業。 “リバースエイジング・健康寿命を延ばす”を命題に“見た目”の大切さと“動き目”の大切さを唱え、「整形外科」「美容外科」「美容皮膚科」「リハビリテーション科」を一つの科として診療している。

著書
「3か月で10歳若返る わたしはリバースエイジングドクター」(H304月1日発刊予定) メディア掲載歴
『Domani』2018年3月号、『VoCE』2017年11月号、『厳選 クリニックガイド』、『VOGUE』2017年9月号、『VoCE』2017年4月号、『VoCE』2017年3月号、『ViVi』2016年8月号、『VoCE』2016年6月号、『InRed』2016年6月号、『VOGUE』2016年1月号、『DRESS』2016年2月号、『MAQUIA』2016年2月号、『VoCE』2015年2月号、『VOGUE』2015年1月号、『MyAge』2015年秋冬号、他多数