膝の内側に痛みがあるのはなぜ? 原因や改善・予防法について解説!
2014/09/12
2018/08/27
監修: 光伸メディカルクリニック院長 中村 光伸
膝の内側が痛いと悩んでいる人はいませんか? 膝の内側は痛みが出やすい箇所です。年齢が高くなるにつれて痛みが出やすくなりますが、適切な対処をすることで痛みを解消させることができます。逆に、「年のせいだから」と放置しておくと痛みが強くなることもあるでしょう。
今回は、膝の内側に痛みが出る原因や対策方法・予防方法を紹介します。
この記事を読めば、痛みが出てもすぐに対処ができるでしょう。膝の内側の痛みに悩んでいる人は、ぜひ読んでみてくださいね。
1.膝の内側の痛みについて
膝の内側に痛みがあるのは、何かしらの不具合・不調が起きている証拠です。まずは、痛みのパターンや最も痛みが多い箇所・女性に多い理由をチェックしておきましょう。
1-1.膝の内側の痛み
膝には、大腿骨(だいたいこつ)・半月板(はんげつばん)・側副靭帯(そくふくじんたい)・関節軟骨(かんせつなんこつ)・脛骨(けいこつ)など、重要な部位が多数集まっている場所です。膝の内側に痛みが出ている場合、これらの部位に炎症が起きていたり、ズレていたりすることがあります。私たちは、日常生活の動作においても膝に大きな負荷をかけているのです。たとえば、屈伸運動のような単純動作でも、膝のお皿が圧力を受けています。
主に、ズキズキとしたにぶい痛みが出てきますが、さまざまな原因が考えられるでしょう。日常の動作を振り返りながら、具体的にどのあたりが痛むのか確認してください。
1-2.最も痛みが多い箇所
ほとんどの方が、関節内側の関節裂隙(かんせつれつげき)から鵞足(がそく)と呼ばれる部分に痛みを感じるようです。膝のお皿に近い内側あたりとなります。なお、鵞足とは、縫工筋(ほうこうきん)・薄筋(はくきん)・半腱様筋(はんけいようきん)の3つで構成された付着部で、まったく異なる支配神経を持っており、膝の内側に痛みが出てきた際はこの部分に炎症が起きている可能性があります。
1-3.女性に多い理由
膝の内側の痛みを訴えるのは、男性よりも女性が圧倒的に多い傾向があります。特に、60~70代の女性に多く、主な理由としては「加齢」が関係しているのです。加齢と運動不足によって、筋肉が硬くなり、関節をなめらかにする成分も少なくなります。そのため、膝の内側に痛みを感じることが多いのでしょう。
また、女性は男性に比べて骨盤が広く、膝が中に入りやすくなります。よって、膝の内側に負荷がかかり、炎症が起きやすくなるのです。女性ならではの構造が、膝の内側に痛みを起こしている理由となります。
2.膝の内側の痛み~原因について
なぜ、膝の内側に痛みが出てくるのでしょうか。主な原因・膝の構造・考えられる病気について詳しく説明します。原因が分からない方は、ぜひチェックしてください。
2-1.主な原因
主な原因は、ケガ・筋肉・そのほかの3つがあります。まず、ケガ(外傷)で起こる痛みの場合は、激しいスポーツや転倒・交通事故など膝の内側に外力が加わったことが原因です。外力が加わることで、筋肉・靭帯・関節が損傷します。
筋肉が原因の場合は、足を内側に寄せる筋肉の付着部である鵞足の炎症が痛みを引き起こしているのでしょう。また、足を内側に寄せる筋肉である内転筋群の疲労・柔軟性の低下も関係しています。
そのほかの原因としては、膝のお皿と大腿骨の間にあるヒダ状の膜の炎症・変形性膝関節症によるもの・痛風・骨腫瘍などが原因になっているケースもあるのです。
2-2.膝の構造について
膝は、体の中で1番大きな関節だといわれています。大腿骨と脛骨(けいこつ)の継ぎ目にあたり、お皿といわれている膝骸骨(しつがいこつ)の3つの骨から成り立っている部位です。さらに、大腿骨と脛骨、膝蓋骨と大腿骨の接触面は「関節軟骨(かんせつなんこつ)」というクッションでおおわれています。クッションでおおわれているからこそ、正常に膝を動かすことができるのです。また、大腿骨と脛骨の関節面には、半月板(はんげつばん)というクッションがあります。
2-3.考えられる病気
膝の内側に痛みが起きたときは、さまざまな病気が考えられます。最も多いのが、変形性膝関節症です。変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減ることで骨が変形していき、関節の機能が低下し、痛みを生じる疾患です。高齢者の発症率が高く、膝の痛みの代表的な疾患といわれています。
ほかにも、病気ではありませんが、膝の内側に炎症が起きる、鵞足炎(がそくえん)もあります。鵞足炎は、日常の動作・姿勢が主な原因といわれています。
3.膝の内側の痛み~改善方法
それでは、どうすれば膝の内側の痛みが改善できるのでしょうか。ここでは、受診すべき症状、病院・治療の流れ、セルフケア、注意点について説明します。
3-1.受診すべき症状
1週間以上経過しても膝の痛みが治まらない・歩けないほどの痛みがある場合は、すぐに受診することをおすすめします。骨折したときのように激しい痛みではなくても、腫れていたり、内出血を起こしたりしていることがあるのです。放置すれば、次第に症状が悪化し、歩けない状態にまで進行することになるでしょう。また、膝に力が入らない状態も受診したほうが良いですよ。少しでも異変・不調を感じた場合は、1度診てもらったほうが安心できます。
3-2.病院・治療の流れ
膝の内側に痛みが現れたときは、整形外科を受診してください。整形外科では、レントゲン撮影などで細部まで検査します。状態や進行具合によって、治療法が異なるでしょう。初期の場合は、安静にすることとアイシングの指導が行われます。痛みを抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬などの飲み薬も処方されるでしょう。さらに、湿布(しっぷ)や痛み止めの飲み薬で効果がない場合は、ステロイド注射を行うこともあります。ほかには、以下のような保存療法が代表的です。
- 患部の温熱療法
- 低周波治療
- テーピング
- 干渉波治療
- ストレッチ・マッサージなどによる筋肉の緊張緩和
具体的な治療法に関しては、病院で説明を受けてください。受診の際は、どこにどのような症状が出ているのか、具体的に伝えることが大切です。
3-3.セルフケア
病院で処方された薬を使うことで痛みはある程度治まりますが、膝の痛みが起こる根本的な原因にアプローチできるとは限りません。骨のゆがみや筋緊張(きんきんちょう)・姿勢・動作を見直し正しくしていくことが大切です。姿勢が悪い方は、背筋をまっすぐ伸ばした状態を心がけ、運動不足の方は運動を始めてください。
また、栄養のある食事を心がけることも大切です。関節や筋肉の柔軟性がなくなることで、内側に痛みが出てきます。そのため、柔軟性を高めるためのストレッチと同時に、動きをなめらかにしてくれる栄養素を摂取してください。
病院で行う治療と同時進行で、セルフケアも徹底していきましょう。
3-4.注意点
症状が悪化するほど、治療が長くかかります。治療期間を短く、費用を抑えたい場合は、すぐに病院を受診してください。また、症状が悪化すれば、完治するまで時間がかかり、日常生活にも支障をきたすことになります。最悪な状態になると、スムーズに歩けなくなってしまうほどです。膝の痛みを軽くみてはいけません。痛みがひどくなる前に病院を受診し、スポーツなど膝に負担がかかる行動は控えておきましょう。とにかく、安静にすることが大切です。
4.膝の内側の痛み~予防法
膝の内側に出る痛みは、未然に予防することができます。予防のための生活習慣・予防法・サプリメント・NG行為についてチェックしていきましょう。
4-1.予防のための生活習慣
膝の内側の痛みは、日常生活で改善することができます。初期症状であれば、安静と正しい姿勢・負担のかからない動作で痛みがやわらぐでしょう。特に、生活で注意しておきたいのが、普段の姿勢と動作です。姿勢が悪いと、膝に上半身の重みがかかります。膝関節と筋肉に大きな負荷がかかるため、常に正しい姿勢を心がけてください。
また、お風呂あがりの筋肉がやわらかくなったときに、ストレッチをすると良いでしょう。ストレッチの方法は、以下のとおりです。
- うつ伏せの状態になり、伸ばすほうの足を曲げる(もう片方の足はまっすぐに伸ばしたまま)
- 曲げた足の甲(こう)付近を同じ側の手で持ち、外側に開いていく(開けるところまで)
- そのままの状態を30秒間ほどキープする
また、以下のストレッチもおすすめです。
- あお向けになって、伸ばすほうの足をもう片方の足に乗せる
- 乗せた足を無理のない程度に外へ開いていく
- そのままの状態で30秒間ほどキープする
4-2.予防法
運動不足になりがちな中高年・高齢者に多い膝の内側の痛みは、ストレッチ・運動が効果的です。先ほど説明したストレッチを、できるだけ毎日続けてください。ストレッチをすることで筋肉・関節の柔軟性がアップします。また、軽めのウォーキングもおすすめです。痛みが出るときは無理をせずに、重力の影響を受けない水中運動も良いでしょう。
4-3.サプリメント
膝の痛みを改善するために、栄養のある食生活が必要です。炭水化物・たんぱく質・脂肪・ビタミン・ミネラルの5大栄養素をバランスよく摂取してください。ただし、仕事や家事が忙しく、十分な栄養素が摂(と)れないときもあるでしょう。そんなときは、サプリメントを利用することも方法の1つです。サプリメントは、栄養素を効率よく吸収できます。「私の救急箱」では、関節のサポートを行うサプリメントを販売しているので、ぜひチェックしてください。
4-4.NG行為
膝に負荷がかかる姿勢や動作・不規則な生活習慣・偏った食生活はNGです。最初は、症状が少なくてもいつの間にか痛みを強く感じるようになります。また、痛みが出たときに、無理をして動いたり、激しいスポーツをしたりするのも危険です。痛みが出てきたときは、すぐ安静にしてください。そして、病院で診てもらいましょう。
5.膝の内側の痛みに関してよくある質問
膝の内側の痛みに関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.放置したらどうなるのか?
A.膝の内側に炎症が起きているときは、炎症を抑えるために「関節液」と呼ばれる液体が分泌されます。膝に水がたまるのは、関節液が分泌されている証拠です。放置すると症状が悪化し、杖(つえ)をつかなければ歩けなくなってしまいます。急遽(きゅうきょ)、手術になる可能性もあるのです。
Q.サプリメントの効果が知りたい
A.サプリメントは成分が凝縮されたものです。普段の食事では十分に吸収できない成分を、直接体内に取り入れることができるでしょう。日々の生活に、ぜひ取り入れてください。
Q.膝の内側に痛みを感じやすくなる人とは?
A.内股(うちまた)で歩いている・O脚とX脚などの人は、膝の内側に大きな負荷がかかっている傾向があります。O脚とX脚は簡単に治せるものではないため、専門の医療機関に相談してください。
Q.セルフケアをしても痛みが改善できない場合は?
A.ストレッチなどのセルフケアを試しても痛みや症状に変化がない場合は、別の原因があるか、体のバランスが崩れている可能性があります。筋肉・関節の状態が悪化している恐れもあるため、すぐに病院を受診したほうが良いでしょう。
Q.膝の内側が痛いときに効くツボとは?
A.膝の痛みに耐えられないときは、効果的なツボを押してみてください。膝の内側の痛みに効果的なツボは、「内膝眼(うちしつがん)」と呼ばれる部分です。内膝眼は、膝のお皿の真下・内側にあるくぼみとなります。その部分をゆっくり10秒間ほど押してください。
まとめ
いかがでしたか? 膝の内側に痛みを感じる人は、60~70代の女性に多い傾向があります。女性は男性よりも骨盤が広く筋肉量が少ないため、膝の内側に大きな負担がかかりやすいのです。外傷・関節と筋肉の柔軟性低下・運動不足などの日常生活が主な原因となるでしょう。膝の痛みがひどい場合は、病院での治療が必要です。初期症状の内に治療を始めれば、順調に改善できるでしょう。しかし、症状を放置すれば、治療が長くなり、日常生活にも支障をきたします。痛みから抜け出すためにも、基礎知識を身につけておきましょう。
監修者
中村 光伸
光伸メディカルクリニック(東京 新宿)院長
医学博士
日本整形外科学会専門医
日本整形外科認定スポーツ医
日本整形外科認定リウマチ医
日本体育協会公認スポーツドクター
日本抗加齢学会認定専門医
日本胎盤臨床医学会認定専門医
日本美容皮膚科学会
日本レーザー治療学会
東京生まれ。北里大学医学部卒業、北里大学整形外科入局。
学位習得後、フンボルト大学外傷再建外科学(ドイツ)・チャンガン大学形成外科美容外科(台湾)へ留学。
Jリーグヴァンフォーレ甲府チームドクター、山梨学院大学陸上競技部(駅伝)チームドクターを歴任。
北里大学整形外科専任講師、北里大学救命救急整形外科部長、松倉クリニック&メディカルスパ等を経て、2011年12月、自身の理想とする医療を実現するため「光伸メディカルクリニック」を開業。 “リバースエイジング・健康寿命を延ばす”を命題に“見た目”の大切さと“動き目”の大切さを唱え、「整形外科」「美容外科」「美容皮膚科」「リハビリテーション科」を一つの科として診療している。
著書
「3か月で10歳若返る わたしはリバースエイジングドクター」(H304月1日発刊予定)
メディア掲載歴
『Domani』2018年3月号、『VoCE』2017年11月号、『厳選 クリニックガイド』、『VOGUE』2017年9月号、『VoCE』2017年4月号、『VoCE』2017年3月号、『ViVi』2016年8月号、『VoCE』2016年6月号、『InRed』2016年6月号、『VOGUE』2016年1月号、『DRESS』2016年2月号、『MAQUIA』2016年2月号、『VoCE』2015年2月号、『VOGUE』2015年1月号、『MyAge』2015年秋冬号、他多数